アーツ・チャレンジ
2010
[美術部門選考委員][市川政憲] [加藤義夫] [宮村周子] [本江邦夫] [山本さつき](五十音順)
 
いち かわ   まさ のり        
      美術評論家 茨城県近代美術館長  
 前回より3件多い111件の応募があった。県内在住者の割合が35%から45%に増えている。
 今回は、16の展示スペースが予定され、13件を上限に採択するプランの選考を行った。委員はそれぞれ16件以内で投票した結果、満票1、4票3、3票1、2票18件となり、3票以上の5件と、2回目の投票で2票のなかから8件を選び、13件を採択した。
 応募の傾向は、通常「アートスペース」として貸し出されている壁のある室内スペースへの応募が多かった。これまでになく、絵画作品の応募が多く、前回までの8階のギャラリーが使用できないこともあって、絵画展示で応募した人たちには、厳しい結果となった。
 スペースを生かす展示を公募するという趣旨から、スペースごとに選考されるべきであろうが、今回は、採択された13件のうち4件が、応募したサイトとは別の場所が想定されての採択となった。
 多いところでは13件、12件の応募があり、採択された1件以外にも実現を見てみたいプランもあり、また、応募者が現場をよく知らずに立案しているように思えるケースもあり、1回目の投票では、従来から、サイトごとに1票を投じるという方式をとらずにきたが、そのあいまいさが問題を表面化させてきたように思う。
 私は、このプロジェクトが始まる段階で、芸文センターの内と外まわりの空間が活用されてもよいのではないかと思い、このようなプロジェクトを提言したものだが、今回絵画の応募が目立ったことは、4回目を迎えて、展示目的のスペースの使用とそうではないスペースの活用とが、綯い交ぜになって、プロジェクトそのものをあいまいなものにしている感を抱かせる。展示壁が用意されたサイトへの応募の集中の傾向は、「アートスペース」のような本来展示空間として用意されたサイトが提供されている限り、自然なことでもある。硬直した建築的空間の活性化以前に、発表の場を求める思いが押し寄せているのであろう。
 壁によらないものは、11階の展望回廊のような特殊な場所のほかでは、場所に対するパブリックな協働性に立ったアプローチという点で印象的なものは少なかった。
 今後の方向を考える必要があると思う。「アートスペース」をはずせば、プロジェクトの趣旨は明確にはなるだろうが、推進力は弱まり、発表の意欲を削ぐことになるだろう。ここにも「芸術」と「アート」の問題が顔をのぞかせているように思う。
 ただ、いま見直しをかけるべきは、サイトごとの応募方式ではないだろうか。それは取り払わないと、趣旨・方式と実態のズレが、プランの実施に向けて調整を図るキュレーターの負担を重くするばかりである。
 
市川政憲プロフィール

 東京生まれ。1971年から東京国立近代美術館に勤務。2003年から2007年まで愛知県美術館長。「野見山暁治展」「国吉康雄展」「アジアの潜在力-海と島が育んだ美術-」などの展覧会を企画する。2007年4月から現職。
 

 

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